浪 漫 書 簡

昼寝とロックンロール

いわゆる「文化的素養」に対するスタンスとかについて

読んだ。

cakes.mu

おぐら あとは、これも本に書いてあった、テレビは他のカルチャーと比べて浅い、っていうのも、人材の質の問題ですよね。全員とは言わないまでも、テレビ業界の多くの人が、流行りのタレントや芸人にはめっちゃ詳しいのに、最新の音楽とか演劇とかはノーマークだったり。

藤井 文化的な素養って、業界に入ってからじゃ遅いんでしょうね。社会に出る前に、何をどんなふうに見て育ってきたかってことで。やっぱり学生時代に飲み会中心の生活だった人は、ちょっと……。

藤井さんが言っている「文化的素養」について、これはメモ書き半分、ちょっとした意見くらい書いておく。

俺は今まで何度か、様々なカルチャー、音楽とか漫画あるいはファッションなんかについて詳しく知ってると楽しいんだろうなあ。そして、それに対してしっかりとした感想を話すことができればより楽しいんだろうなー、という意識が少なからずあったわけです。いま思い返すだけでも、小中高の12年間は野球とダウンタウンくらいしかカルチャー界隈を見てこなかった自分に対して、大学生になってからやっぱりどこか劣等感は持っていたんです。その劣等感は、よく言われる人としての「教養」が不足していること、そして何より、音楽に詳しい身近な友達たちが、俺が人生で一度も聞いたことのない話で盛り上がるその「内輪感」に対する嫉妬に起因していたんですね。

その軽薄な「嫉妬心」から自分もカルチャーに明るくなって、友達と盛り上がって話をしたいと思い、もともと興味レベルで漁っていた音楽を、半ば意識的に半年くらい聴き込んだ、というわけです。

ただ、この記事を読んで自分のカルチャーに対するスタンスがちょっと良ろしくないんじゃないかと自省を迫られた次第。

じゃあ、カルチャー界隈に対して、理想のスタンスってどんなものか。

過去の醜態を惜しみなく曝け出しながら、少しメモを残しておきたい。

結論からいうと、食わず嫌いをせず、自分が好きなものをクールに見極めて、それに後は身を委ねる。そして、気楽に抱いた感想をふらっと友達に話すことができたら良いね、というもの。

「嫉妬」から湧いてくるモチベーションにはプラスとマイナス両面に作用する2つのケースがある。プラスかマイナスの分かれ道は、自分に対してクールかどうかであって、マイナスに働くときはだいたいにおいて、熱すぎる。残念なことに、モチベーションをマイナスに作用させてしまった俺は、そこまで好きじゃない音楽に対しても(はっきり言えば自分に嘘をついて)「いいね、この歌〜!」みたいな感じで舞い上がっていたわけ。すごくダサい。すごく。

しかし、藤井さんのカルチャーに対するスタンスを著書の中で知ったときに、「あ、オレ完全に間違ってるやん」と衝撃を受け、今の時代において、ある意味とても貴重な藤井さんの「クールさ」に憧れを抱いた。

俺みたいにカルチャーに詳しく「なろう」としてる人間は、「詳しい」の定義を履き違えてる。「詳しい」というのは、必ずしも「幅広く知っている」ということだけでなく、「局所的に知っている」という意味も含まれているわけです。俺が、幅広く知っていることだけを「詳しい」と履き違えた要因を一応説明しておくと、それは自分がTwitterでフォローしている音楽評論家たちにあるんだけど、それは単なる要因であって当然彼らに責任は微塵もない。単純に、彼らは仕事の性質上、幅広く音楽を聴く必要があるから。熱が高すぎると、こういったごく基本的な認識すらできなくなる場合もあるのは怖いなと思った。

藤井さんは今仕事としている「お笑い」に関しても、大学生時代にお笑い全般ではなく「ダウンタウン」だけにのめり込んでたと言っていた。想像力を働かせず、自分の知っている環境だけを見渡した時に「全般を知っている」人が多いから「全般を知ってる=文化的素養がある」という意識が知らぬ間にできていたけど、そうじゃない。すぐ近くの環境だけを見て、それと世界は同じだと思い込んでしまってた好例。

最初に述べた、とりあえず試してクールに気楽に堪能してみるという俺が目標とするスタイルはなにもカルチャーに限った話ではなく、他のあらゆる場面でも意識したい。