浪 漫 書 簡

昼寝とロックンロール

”違法営業”なのに「幸運祈る」と裁判官に許されたこのおっさんが好きだ

読んだ。

heapsmag.com

長い間、ブルックリンでバーを経営してきたサニー・バルツァーノっていうイケてるおっさん。創業当初は、ライセンス周りの問題で「違法営業」として裁判沙汰になった。

でも、裁判官がバーの常連で「あなたにライセンスを取るために1年の猶予を与えます。どうか幸運を。あなたの成功を願っています。」っていう、違法だったのに、なんともカッコいい感じで切り抜けちゃったおっさん。

彼の言葉で「うわあーこれだよなー」って思った言葉がこれ。

とても大切にしていることがある、という。それは「ひとりにしない」こと。「来てくれた人に家に帰ってきたような気持ちになってほしい。だから絶対に孤独にさせない。寂しそうにひとりで飲んでいれば「今日一日はどうだった?」と話しかける。壁が溶けてきたら隣のお客さんに紹介する。そして“Family”になって帰っていくんだ。そしてそれは僕の人生でもっとも大切なこと」と、いくつもの会話がとびかったバーカウンターを、愛でるように見つめながら話す。 

この部分を読んで、(言葉としては矛盾してるけど)ビジネスとはまったく違う軸で商売をしてるなあって。

 

サニー(呼び捨て)を見て思い浮かんだのが、下北沢・ベアポンドコーヒーの田中さん。田中さんも「私は自分を動物だと思ってるので、人間のようにビジネスはしないんです。」って、なんかエグいこと言ってた。

hirotosaito.hateblo.jp

いや、自分、ビジネスしたことないけど、田中さんとかサニーみたいな人を見ると、いつも「良いなあ」って震えながら思うのよ。

彼らみたいに「自分がやりたいことをやる」って、言葉にすると安っぽく聞こえるし、そろそろ聞き飽きた感があってすごくイヤなんだけど、やっぱ「やりたいことやって死ぬ」ことが誰にとっても本望なわけで。

「無知であるがゆえの無邪気さ」の先には、大体において悪いことが待ってる。この言葉の意味は、20年っていう短い時間の中でも嫌になるほど思い知らされてきた。

それでも今はね、将来、自分で店を開いたら、仕事にやる気が湧かず元気がない友達を見たとき、自分が1番好きなビールをそっと出して「金いらないから、とりあえず一緒に飲もう?」みたいな感覚で仕事をしてぇなあって。

誤解のないように言っとくと、おれは「金は稼げるだけ稼ぎたい」って思うし、1人で稼げる力をつけなきゃダメだよっていう先輩のアドバイスにも100%納得してる。

「金がないと不自由」ってことは、大学生活で死ぬほど理解してるから。

ベアポンドの田中さんみたいにビジネスを完全に捨てる勇気はない。

確かにそんな勇気はないんだけど、さっき言ったような感覚を、人生で何十回何百回と味わいてぇなって気持ちは、どうしたって捨てられないわけ。

 

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俺が通う大学の近くにある「factory」ってカフェのオーナーも、サニーみたいな感じだ。

factoryには上京以来ずっと通ってて、席に座る前に「コーラ?」って尋ねられるくらい通ってる。(アサイーを飲みたいときもあるけど)

 

店内のソファーや音楽、そして自家製チキンカレーは言うまでもなく最高なんだけど、オーナーさんの「度量」というか、包容感がハンパない。

そしてそれが、このカフェに何度も行きたくなる1番の所以。

前に、オーナーさんと軽く話す機会があって、「factoryは自分の家みたい。『カフェ』っていう形態上なかなか儲からないんだけど、いい感じかな。」と仰ってたのが印象深いんだよなあ。

なんやねん「いい感じ」って。良いなあ。

オーナーは「15時以降持ち込み禁止」という店のルールを「セコい」と思って、すぐにそれを廃止したり、傘の貸し出しサービスをしたり、店の前を俺が通りがかっただけで手を振ってくれたりする。昼寝もOK。(カフェで「昼寝OK」って他にある?)

そんなことしてるんだから、腹の底から「いい感じ」って言えるわなあって納得した。

 

サニーとか田中さんとかfactoryのオーナーさんたちを「本質的だ」なんて言ったら、ビジネスやってる人たちに後ろから刺されそうだし、言うつもりもないんだけど、「ビジネスを優先してない人の人生って、どんなもんだろうなあ」ってのを妄想すると、つい揚々としてしまう。

 

そんなかんじです

 

ファクトリー (factory) - 渋谷/カフェ [食べログ]